「良く寝たのに眠い」「運転中に眠い」その原因は睡眠時無呼吸症候群かも
「8時間寝たはずなのに、昼間眠い」 「運転中、信号待ちで眠くなってヒヤッとした」 「会議中にウトウトして、周りに心配された」
良く寝たのに眠い状態が続いているなら、それは単なる疲労ではなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれません。日本では推定300万人以上が罹患しているといわれるこの病気は、運転中の居眠り事故の原因として社会問題にもなっています。
睡眠時無呼吸症候群とは?昼間眠い原因を医学的に解説
睡眠時無呼吸症候群の定義とメカニズム
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が10秒以上停止する状態が、1時間に5回以上繰り返される病気です。この呼吸停止により、脳が酸素不足を察知して覚醒反応を起こすため、本人は気づかないまま何度も睡眠が中断されています。
つまり、「良く寝たのに眠い」と感じるのは、実際には質の良い睡眠がとれていないからなのです。
こんな症状があったら要注意!睡眠時無呼吸症候群のチェックリスト
夜間の症状
□ 家族からいびきがうるさいと言われる
□ いびきが突然止まり、また始まることがある
□ 夜中に何度もトイレに起きる(2回以上)
□ 寝汗をびっしょりかく
□ 朝起きると口がカラカラに乾いている
昼間の症状
□ 良く寝たのに眠い状態が続く
□ 運転中に眠い、信号待ちでウトウトする
□ 昼間の会議や作業中に強い眠気を感じる
□ 午後2時頃に異常に眠くなる
□ 集中力が続かない、イライラしやすい
3つ以上当てはまる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
運転中に眠い!睡眠時無呼吸症候群が引き起こす交通事故リスク
衝撃の統計データ
国土交通省の調査によると、睡眠時無呼吸症候群の患者が交通事故を起こす確率は、健常者の約2.5倍。重症患者では約7倍にも上ります。
運転中の眠気が危険な理由
1. マイクロスリープ(瞬間的居眠り) 運転中、1~2秒の瞬間的な居眠りが発生。時速60kmで走行中なら、2秒で約33メートルも無意識に進んでしまいます。
2. 判断力・反応速度の低下 睡眠時無呼吸症候群による慢性的な睡眠不足は、血中アルコール濃度0.05%(酒気帯び運転レベル)と同等の判断力低下を引き起こします。
3. 注意力の散漫 昼間の眠気により、前方不注意や標識の見落としが増加。特に高速道路での単調な運転時に事故リスクが高まります。
「良く寝たのに眠い」を解消!睡眠時無呼吸症候群の治療法
CPAP療法:最も効果的な治療法
CPAP(シーパップ)は、鼻マスクから空気を送り込んで気道を広げる治療法です。
CPAPの効果
- 使用初日から昼間の眠気が改善
- 運転中の眠気が約80%減少
- 集中力・記憶力の向上
- 血圧の低下、心疾患リスクの軽減
保険適用により、月額約5,000円で治療可能です。
マウスピース療法:軽症~中等症に有効
下顎を前方に固定することで気道を確保。持ち運びが便利で、出張や旅行時にも使用できます。
生活習慣の改善:今すぐできる対策
体重管理
- 体重を10%減らすだけで症状が約30%改善
- 首回りの脂肪を減らすことが重要
睡眠姿勢の工夫
- 横向き寝を習慣化(仰向けは気道が狭くなりやすい)
- 枕の高さを調整(高すぎると気道が狭まる)
アルコール・喫煙の制限
- 寝酒は睡眠の質を著しく低下させる
- 喫煙は気道の炎症を引き起こす
昼間眠い時の緊急対策!運転中の眠気を撃退する方法
運転前の準備
- 睡眠チェック:前夜の睡眠が6時間未満なら運転を控える
- カフェイン摂取:出発30分前にコーヒーを飲む
- ルート確認:休憩ポイントを事前に決めておく
運転中に眠い時の対処法
即効性のある対策
- すぐに安全な場所に停車
- 15~20分の仮眠(パワーナップ)
- 車外に出て5分間のストレッチ
- 冷水で顔を洗う
- ガムを噛む、冷たい飲み物を飲む
NGな対策
× 窓を開けて我慢する
× 音楽の音量を上げる
× エナジードリンクの大量摂取
これらは一時的な効果しかなく、かえって危険です。
睡眠時無呼吸症候群の検査と診断|早期発見が重要
簡易検査(自宅で可能)
指先のセンサーと鼻の下のセンサーで、血中酸素濃度と呼吸状態を測定。費用は保険適用で約3,000円。
精密検査(PSG検査)
一晩入院して、脳波・眼球運動・筋電図・心電図などを総合的に測定。確定診断に必要な検査です。
受診の目安
- 昼間の眠気でESS(眠気尺度)が11点以上
- 家族からいびきと無呼吸を指摘された
- 運転中に眠い経験が月2回以上ある
- 良く寝たのに眠い状態が2週間以上続く
職業ドライバー必見!睡眠時無呼吸症候群スクリーニングの義務化
2024年から、トラック・バス・タクシーなどの職業ドライバーに対して、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査が段階的に義務化されています。
企業の取り組み
- 定期健康診断での問診強化
- 睡眠時無呼吸症候群の啓発セミナー
- CPAP治療費の補助制度
- 昼間の仮眠室の設置
まとめ:「良く寝たのに眠い」「運転中眠い」は放置厳禁!
睡眠時無呼吸症候群は、単なる「いびき」の問題ではありません。昼間の眠気による交通事故リスク、さらには心疾患・脳卒中のリスクも高める深刻な病気です。
今すぐ行動を起こすべき3つの理由
- 命に関わる:運転中の居眠り事故は自分だけでなく他者の命も危険にさらす
- 治療効果が高い:CPAP療法により約90%の患者で症状が改善
- QOL(生活の質)が劇的に向上:昼間の眠気が解消され、仕事効率も向上
「良く寝たのに眠い」「昼間眠い」「運転中に眠い」という症状は、体からの重要なサインです。睡眠時無呼吸症候群の可能性を疑い、早めに専門医を受診しましょう。
適切な治療により、安全な運転と快適な日常生活を取り戻すことができます。あなたと大切な人の命を守るために、今日から行動を始めてください。

にしおか内科クリニック
院長 西岡 清訓
(にしおか きよのり)
- (元)日本呼吸器外科学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会指導医・専門医
- 日本外科学会専門医
- 麻酔科標榜医・がん治療認定医