コラム

【呼吸器内科医が解説】長引く咳にご注意!クラミジア肺炎・百日咳が流行中~咳の原因と対策~

2025.08.03

2025年

最近、クラミジア肺炎や百日咳による長引く咳の患者さんが増加しています。 

特に百日咳の流行状況は2025年5月第22週時点での累計報告数は25,037人で、前年(2024年)の年間報告数(約4,000人)を大きく超え、過去最多を記録しています。咳の原因は実に様々ですが、今回は特に流行が見られるクラミジア肺炎と百日咳にフォーカスして、長引く咳の原因と対策について詳しく解説します。 

咳とは何か?そのメカニズム 

咳は、気道に刺激や異物が入り込んだときに、呼吸筋の収縮によって気道の内容物を強く吐き出し、気道を清浄化する反射反応です。正常な咳は喉や気管支の異物排除の役割を持ちますが、長引いたり、激しく続く場合は何らかの異常を示すサインです。 

特に3週間以上続く咳は、単なる風邪ではない可能性が高く、クラミジア肺炎や百日咳などの感染症が原因となっているケースが増えています。これらの感染症は見逃されやすく、適切な治療が遅れると症状が長期化する傾向があります。 

咳が続く症状の背景にある病気

長期化する咳は、感染症からアレルギー性疾患、COPD、逆流性食道炎、がんまでさまざまな疾患と関連しています。特に、クラミジア肺炎や百日咳などの感染症は成人にも見られ、見逃すと長期にわたって症状が続くことがあります。 

現在、クラミジア肺炎と百日咳の感染者数が増加傾向にあり、医療機関でも注意喚起がなされています。これらの感染症は、一般的な風邪とは異なり、数週間から数ヶ月にわたって咳が続くことが特徴です。特に成人の百日咳は症状が軽いため「ただの長引く咳」として見過ごされることが多く、周囲への感染源となる可能性があります。 

長引く咳の原因とその詳細

咳が3週間以上続く場合、原因の特定が必要です。一般的な原因には気道の感染や炎症、アレルギー、気管支喘息、逆流性食道炎、喫煙による気道刺激、さらには肺結核や肺がんまで含まれます。特にクラミジア肺炎は成人にも感染しやすく、長期間続くことがあるため注意が必要です。 

クラミジア肺炎の原因菌であるクラミジア・ニューモニエは、飛沫感染により広がり、学校や職場などの集団生活の場で流行することがあります。一方、百日咳は百日咳菌による感染症で、ワクチン接種を受けていても時間の経過とともに免疫が低下し、成人でも感染することがあります。 

クラミジア肺炎と百日咳の特徴と対策

クラミジア肺炎 

クラミジア・ニューモニエによる感染症で、湿った咳や痰、発熱を伴います。初期は乾いた咳から始まり、次第に痰を伴う咳へと変化することが多く、微熱から中等度の発熱、頭痛、全身倦怠感なども見られます。症状は比較的軽いことが多いものの、適切な治療を行わないと数週間から数ヶ月にわたって症状が続くことがあります。治療にはマクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン、クラリスロマイシンなど)やテトラサイクリン系抗菌薬が有効です。 

百日咳 

百日咳菌による感染症で、激しい咳き込みや吸気時の笛声音(whooping)が特徴です。咳は夜間に悪化することが多く、連続した咳き込みの後に大きく息を吸い込む際に特徴的な音が聞こえることがあります。成人の場合は典型的な症状が現れないことも多く、単に長引く咳として見過ごされがちです。早期にマクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、アジスロマイシンなど)による治療を開始することで、症状の軽減と周囲への感染拡大を防ぐことができます。予防接種の効果は時間とともに減弱するため、成人も追加接種を検討することが推奨されています。 

咳の診断と検査方法 

適切な診断には、詳細な問診と臨床症状の観察から始まり、必要に応じて各種検査が行われます。胸部X線検査では肺炎の有無や範囲を確認し、痰の培養検査やPCR検査によってクラミジア肺炎や百日咳の原因菌を特定します。血液検査では抗体価測定により過去の感染歴や現在の感染状況を把握することができます。また、呼吸機能検査により気管支喘息やCOPDなどの慢性呼吸器疾患の有無も確認します。 

受診すべきタイミングと医療機関 

長引く咳や血痰、胸痛、発熱、体重減少、夜間や運動時の咳の増加などが見られる場合は、早めに呼吸器内科を受診してください。特に3週間以上続く咳は、クラミジア肺炎や百日咳を含む様々な疾患の可能性があるため、専門的な診断が必要です。また、免疫抑制状態や喫煙歴がある方も定期的なチェックをおすすめします。 

咳と関連する疾患の症状と原因 

咳の性質によって原因となる疾患を推測することができます。乾いた咳は主にアレルギー、喘息、逆流性食道炎、初期のクラミジア肺炎などが原因となります。痰を伴う咳は気管支炎、肺炎、気管支拡張症、進行したクラミジア肺炎などで見られます。激しい咳は特に百日咳や喘息で特徴的です。胸痛や血痰を伴う場合は、肺結核や肺がんなどの重篤な疾患の可能性もあるため、速やかな受診が必要です。 

痰が絡む咳とその対策 

痰が絡む場合は、十分な水分摂取により痰を柔らかくし、排出しやすくすることが大切です。1日1.5〜2リットルの水分摂取を心がけ、気道を湿らせる薬の使用も効果的です。クラミジア肺炎や百日咳が原因の場合は、適切な抗菌薬投与が必要となります。また、去痰薬や吸入療法も症状の改善に役立ちます。 

胸痛や乾いた咳の原因と対応 

胸が痛む咳は肺血管疾患や腫瘍などの重篤な病気の可能性もあります。乾いた咳はアレルギーや喘息、初期の肺癌の兆候かもしれません。クラミジア肺炎の初期も乾いた咳から始まることが多いため、症状が続く場合は早期診断と治療が必要です。特に胸痛を伴う咳は、肺塞栓症や気胸などの緊急性の高い疾患の可能性もあるため、速やかな医療機関受診が推奨されます。 

咳の治療法と予防策 

感染症による咳の治療では、原因に応じた抗菌薬や抗ウイルス薬を使用します。クラミジア肺炎にはマクロライド系やテトラサイクリン系抗菌薬が有効で、百日咳にはマクロライド系抗菌薬が第一選択となります。喘息やアレルギーには吸入薬や抗炎症薬を用い、逆流性食道炎の場合は胃酸抑制薬や生活習慣の改善が重要です。 

予防面では、百日咳は定期的な予防接種が有効であり、成人も追加接種を検討することが推奨されています。クラミジア肺炎の予防には、手洗い、マスク着用、人混みを避けるなどの基本的な感染対策が重要です。 

生活習慣の改善と日常対策 

喫煙は気道の慢性炎症を促進し、長期的に咳を悪化させる最大のリスク要因の一つです。禁煙により気道の炎症が改善し、感染症への抵抗力も高まります。また、職場での有害物質への曝露を避け、適度な運動と規則正しい生活を心がけることも大切です。十分な睡眠とバランスの良い食事は、免疫力を維持し、クラミジア肺炎や百日咳などの感染症から身を守る基盤となります。 

家庭でできる咳のケア 

温かい飲み物や蜂蜜を摂ることで、喉の刺激を和らげることができます。十分な水分補給は痰を柔らかくし、排出を促進します。部屋の湿度を40〜60%に保つことで、気道の乾燥を防ぎ、咳の症状を軽減できます。うがいや手洗いの徹底も、新たな感染を防ぐために重要です。ただし、症状が長引く場合や悪化する場合は、自己判断せずにすぐ医師に相談してください。特にクラミジア肺炎や百日咳は適切な抗菌薬治療が必要であり、早期の診断と治療が回復への近道となります。 

呼吸器内科では、早期の診断と適切な治療により、多くの疾患の重症化を防ぐことができます。3週間以上続く咳がある場合は、クラミジア肺炎や百日咳の可能性も考慮し、迷わず専門医へ相談しましょう。咳の原因は多岐にわたりますが、適切な診断により原因を特定し、それぞれに応じた治療を行うことで、健康な呼吸器を取り戻すことができます。長引く咳でお悩みの方は、早めの受診で健康な呼吸器の維持を心掛けてください。 

西岡 清訓(にしおか きよのり)

にしおか内科クリニック

院長 西岡 清訓

(にしおか きよのり)

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