咳(せき)とは、喉や気道に侵入した異物や刺激物を排除するために、体が自然に行う防御反応です。咳をすることで、異物や粘液、病原体などを体外に排出し、呼吸を確保する重要な役割を果たします。しかし、咳が長引く場合は、日常生活に支障をきすだけではなく、重篤な病気の一症状である可能性もあるので注意が必要です。
咳は、急性のものから慢性のものまで、また乾いた咳から湿った咳までさまざまな種類があり、それぞれに異なる原因があります。咳が続く場合は、その原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。
咳の原因となる病気
- 感染症
風邪(ライノウイルス、RSウイルスなどによる感染症)、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、気管支炎、肺炎、百日咳、肺結核など様々な感染症が原因になります。 - アレルギー
喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、アレルギー性鼻炎(花粉症、黄砂、PM2.5などに対するアレルギー性鼻炎)
喘息は、気道が過敏になり、咳や息苦しさ、ゼーゼーとした呼吸音が現れる病気です。特に夜間や運動後に咳が悪化することがあります。
ハウスダスト、ダニ、花粉、イヌ、ネコの皮膚などのアレルゲンや気温差、気圧差、運動等が原因となります。気道感染症のあとに喘息を発症することがあるので熱や鼻水、のどの痛みなど風邪の諸症状が収まっているのに咳だけ続く場合は喘息や咳喘息が発症している可能性があります。咳喘息は簡単に言うと喘息の初期状態です。アトピー咳嗽は喘息に似た疾患で、抗アレルギー薬が有効です。気管の咳受容体が敏感になり、喉のイガイガ感を伴う乾いた咳がでます。喘息には有効な気管支拡張剤が無効であることが、喘息との鑑別になります。
花粉が鼻だけではなく気管や気管支に刺激を与え、咳が出ることがあります。
- 鼻の疾患
後鼻漏、副鼻腔気管支症候群など
鼻水が鼻孔から出てくるのではなく、喉に落ちる(後鼻漏)ことにより刺激となって咳が続くことがあります。
副鼻腔気管支症候群は慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎が合併した疾患で痰がからんだ咳が長期間続きます。
- 胃食道逆流症(GERD)
胃酸など胃の内容物が食道に逆流することで、胸やけだけではなく咳が生じることがあります。食道に沿って咳に関与する神経が走っているため逆流がその神経の刺激になったり、逆流物がのどまで到達し誤嚥やのどの炎症をおこして咳がでると言われています。 - 気胸
肺に穴が空いて肺がパンクする病気で咳とともに息苦しさや胸痛を伴いますす。若い痩せた男性に多いですが、喫煙者にも起こりやすいです。 - 肺がん
肺がんができると咳が出ます。喫煙者だけではなく、非喫煙者の腺癌も増えていますので注意が必要です。日本人のがん死亡原因の首位が肺がんです。 - COPD(慢性閉塞性肺疾患)
殆どの場合、タバコの吸いすぎによって起こり肺気腫を合併しています。かなり肺機能が低下した状態で、咳だけではなく息苦しさを伴います。在宅酸素療法の原因疾患の首位です。 - 間質性肺炎
タバコや膠原病によって引き起こされる間質性肺炎が咳の原因となることがあります。 - 心不全
心不全が咳の原因となることがあります。 - ストレスが原因の咳
上記の原因がすべて否定されたときストレスが原因の咳と診断されます。 - 問診と身体診察
医師が咳の持続期間や頻度、他の症状(発熱、痰、胸痛など)について詳しく聞き取りを行います。また、聴診器を使って呼吸音を確認し、異常がないかを評価します。 - 胸部X線検査
肺や気道、心臓の異常を確認するために胸部X線が行われます。これにより、肺炎や肺結核、肺がん、心不全などがないかを確認します。 - 胸部CT検査
胸部X線で異常を認めた場合、その詳細を調べるために胸部CTが必要になることがあります。当院では、受診当日に胸部CT検査を受けることができ、迅速に正確な診断が可能となります。 - 呼気NO検査
喘息が疑われる場合、呼気NO検査を行って、呼気に含まれる一酸化窒素の濃度を測定します。濃度が基準値を超えていると喘息と診断できます。 - 呼気機能検査(スパイロメトリー)
喘息やCOPDが疑われる場合や呼吸機能評価のために呼吸機能検査を行います。 - 血液検査
炎症の程度や好酸球やIgEなどの喘息の指標、個別のアレルギーをしらべるために血液検査を行います。 - 薬物療法
咳の原因が風邪などのウイルス感染の場合、基本的には咳止め、去痰剤などの対症療法が行われます。細菌感染が疑われる場合は抗生剤が必要です。アトピー咳嗽、アレルギー性鼻炎、後鼻漏には抗ヒスタミン薬が使用されます。喘息、咳喘息には、吸入ステロイドや気管支拡張薬が処方されます。副鼻腔気管支症候群には抗生剤の長期投与が必要となることがあります。逆流性食道炎が原因の場合は、胃酸を抑える薬が用いられます。COPDには気管支拡張薬やステロイドの吸入薬が処方されます。間質性肺炎は原因疾患の治療が行われますが、原因不明の場合難治性であることが多いです。 - 生活習慣の改善
喫煙によって起こるCOPDや間質性肺炎が咳の原因である場合、禁煙が最も重要な対策です。また、室内の乾燥を防ぐために加湿器を使用したり、アレルゲンを除去するなど、環境を整えることも効果的です。 - アレルギー対策
アレルギーが原因で咳が出る場合、アレルゲンを避けることが重要です。抗アレルギー薬の使用や、花粉症の場合は外出時にマスクを着用することが推奨されます。 - 心理的サポート
ストレスや不安が咳の原因となっている場合、心理的サポートが必要です。リラクゼーションやカウンセリングが効果的であり、症状の改善が期待できます。 - 手洗い・うがいの徹底
ウイルスや細菌の侵入を防ぐため、外出後や食事前には手洗い・うがいを徹底しましょう。これにより、風邪や細菌感染症の予防が可能です。 - 喫煙を避ける
喫煙は咳の大きな原因となります。特に慢性気管支炎やCOPD、間質性肺炎のリスクを高めるため、禁煙を強く推奨します。 - 適度な湿度の確保
乾燥は気道の粘膜を刺激し、咳を引き起こす原因となります。部屋の湿度を適度に保つことで、咳の予防が期待できます。 - アレルギー対策
アレルゲンとの接触を避けるため、定期的な掃除や空気清浄機の使用、外出時のマスク着用が効果的です。 - 1週間以上続く咳
咳が1週間以上続き軽快傾向がない場合は、受診をおすすめします。 - 激しい胸痛や呼吸困難を伴う場合、緊急性が高いため直ちに受診が必要です。
- 血痰が見られる場合
血痰が出る場合、肺結核や肺がんの可能性もあるため、専門医の診察を受けましょう。 - 咳に加えて38度以上の高熱が持続して解熱傾向がない場合
細菌感染症の可能性が高いため、抗生剤の投与が必要です。抗生剤は基本的には市販されていませんので医療機関の受診が必要です。
咳の診断・検査
咳の原因を特定するためには、下記の検査が必要です。
咳の治療方法
咳の予防方法・気を付けること
受診のタイミング・目安
咳についてよくある質問
Q1. 咳が続くときはどうすればよいですか?
A. 咳が1週間以上続く場合や、咳とともに他の症状がある場合は、医療機関を受診することが重要です。早めに原因を特定し、適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぐことができます。
Q2. 咳を和らげるために有効な家庭療法はありますか?
A. 温かい飲み物を飲んだり、はちみつを使ったドリンクを摂取することが咳を和らげる効果があります。また、加湿器を使用して室内の湿度を保つことも効果的です。
Q3. 咳が止まらない原因にはどんなものがありますか?
A. 咳が止まらない原因は上記を参照してください。
Q4. 子供の咳はどのように対処すればよいですか?
A. 子供の咳は、風邪やアレルギーが原因であることが多いです。夜間の咳が強い場合や、呼吸困難を伴う場合は、早めに小児科医の診察を受けることが重要です。当院では高校生以上の方は診察可能です。
Q5. 市販薬で咳を治すことはできますか?
A. 軽度の咳であれば、市販の鎮咳薬や去痰薬が効果的です。ただし、症状が続く場合や悪化する場合は、医師の診察を受けることが推奨されます。