コラム

【呼吸器内科医が解説】痰の色でわかる体の変化 ~透明・白色・黄色・緑色が示す健康状態~

2025.10.02

2025年

私たちの体は、さまざまな不調を痰の色という形でサインとして送ってくれています。風邪をひいたとき、咳が続くとき、何気なく出る痰の色を見て「いつもと違う」と感じたことはありませんか。実は痰の色には、透明、白色、黄色、緑色など様々な種類があり、それぞれが体の中で起きている変化を教えてくれているのです。

痰とは何か?なぜ色が変わるのか

痰は気道の粘膜から分泌される粘液で、本来は透明で少量しか出ません。健康な状態でも1日に約100mlほど作られていますが、ほとんどは無意識に飲み込んでいます。しかし、風邪や感染症、アレルギーなどで気道に炎症が起きると、痰の量が増え、色も変化します。

痰の色が変わる理由は、主に白血球や細菌、ウイルスなどの存在によるものです。体が感染と戦っているとき、白血球が増えて痰に混ざることで黄色や緑色に変化します。また、血液が混じれば赤色やピンク色、長期間の喫煙や大気汚染物質の影響では茶色や黒色になることもあります。

透明・白色の痰は軽症のサイン?実は要注意な場合も

透明な痰は最も正常に近い状態を示しています。軽い風邪の初期やアレルギー性鼻炎、気管支喘息の軽症時によく見られます。空気が乾燥している季節や、冷たい空気を吸い込んだときにも一時的に透明な痰が増えることがあります。

白色の痰も比較的軽症のサインです。ウイルス性の風邪や軽い気管支炎の初期に多く見られます。また、喫煙者では慢性的に白っぽい痰が出ることがありますが、これは気道の慢性的な刺激によるものです。透明から白色の痰が続く場合でも、咳が長引いたり、息苦しさを感じる場合は、気管支喘息や慢性気管支炎の可能性も考えられるため、注意が必要です。

黄色い痰が教える体内の戦いのサイン

黄色い痰は、体内で細菌感染が起きている可能性を示唆します。風邪が長引いて二次感染を起こしたときや、急性気管支炎、副鼻腔炎などでよく見られます。黄色い痰が出始めたら、体が細菌と戦っている証拠です。

ただし、朝起きたときだけ黄色い痰が出る場合は、夜間に溜まった分泌物が濃縮されただけのこともあるため、1日を通しての変化を観察することが大切です。黄色い痰が3日以上続き、発熱や全身倦怠感を伴う場合は、細菌感染症の可能性が高いため、医療機関での診察を受けることをお勧めします。

緑色の痰は危険信号?すぐ病院へ行くべき理由

緑色の痰は、黄色よりもさらに強い細菌感染や、炎症が長期化している状態を示します。慢性副鼻腔炎、細菌性肺炎、気管支拡張症などで見られることが多く、抗菌薬による治療が必要になることがあります。

緑色の痰が出るときは、多くの場合、咳も強くなり、胸の不快感や微熱を伴うことがあります。特に高齢者や免疫力が低下している方では、肺炎に進行するリスクもあるため、早めの受診が推奨されます。

赤色の痰・茶色の痰・黒色の痰…危険な色の痰を見逃すな

茶色や黒色の痰は、主に喫煙者や大気汚染の強い環境で働く方に見られます。タバコのタールや塵埃が痰に混ざることで生じますが、古い血液が混ざっている可能性もあるため、禁煙外来や呼吸器内科での相談が望ましいです。

赤色やピンク色の痰は血液が混じっている証拠で、最も注意が必要です。気管支炎や肺炎の重症化、肺結核、肺がんなどの可能性があります。特に、鮮血が混じる場合や、痰全体が赤い場合は緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診してください。

正しい痰の観察法~毎日のチェックポイント

痰の色を観察するときは、朝起きてすぐと夕方の2回、白いティッシュペーパーに痰を吐き出して確認するのが理想的です。観察のポイントは色だけでなく、粘り気の程度、量の変化、においの有無なども重要です。

観察記録をつける際は、日付、時間、痰の色、粘度(サラサラ、ドロドロなど)、量(少量、中等量、多量)、その日の体調(発熱、咳の強さ、息苦しさなど)を記録しておくと、受診時に医師への説明がスムーズになります。

今すぐ病院へ!受診すべきサイン

痰の色が変わっただけで慌てる必要はありませんが、以下のような場合は早めの受診を検討してください。

黄色や緑色の痰が3日以上続く場合は、細菌感染の可能性があるため、内科や呼吸器内科での診察が望ましいです。また、37.5℃以上の発熱が続く、強い息苦しさがある、胸痛を伴う場合は、肺炎などの可能性もあるため、速やかな受診が必要です。

血液が混じる痰や、痰の色が急に赤くなった場合は緊急性が高く、救急外来の受診も検討すべきです。また、痰の量が急激に増えた場合や、悪臭を伴う場合も、重篤な感染症の可能性があるため注意が必要です。

自宅でできる!痰を楽にする方法

痰を出しやすくし、症状を和らげるために、家庭でできることがいくつかあります。

まず大切なのは十分な水分補給です。1日1.5〜2リットルの水分を摂ることで、痰が薄まり排出しやすくなります。温かいお茶や白湯は特に効果的です。

室内の湿度管理も重要で、40〜60%の湿度を保つことで気道の乾燥を防げます。加湿器を使用したり、濡れタオルを干したりして適度な湿度を保ちましょう。

また、深呼吸や軽い運動は痰の排出を促します。1日数回、深く息を吸って、ゆっくり吐き出す呼吸法を実践すると効果的です。

痰と生活習慣~今日から始める健康管理

喫煙は痰の量を増やし、色を変化させる最大の要因の一つです。禁煙により、数週間で痰の量が減り、色も正常に近づいていきます。受動喫煙も同様の影響があるため、喫煙環境から離れることも大切です。

バランスの良い食事と十分な睡眠は、免疫力を高め、感染症にかかりにくい体を作ります。特にビタミンCやビタミンA、亜鉛を含む食品は、気道の粘膜を健康に保つ効果があります。

ストレスも痰の状態に影響することがあります。過度なストレスは免疫力を低下させ、感染症にかかりやすくなるため、適度なリラックスタイムを設けることも重要です。

痰の色についてよくある質問と回答

Q: 痰の色が変わったらすぐに抗生物質を飲むべきですか?

A: 必ずしもそうではありません。ウイルス性の感染では抗生物質は効果がないため、まずは医師の診断を受けることが大切です。

Q: 市販の去痰薬は効果がありますか?

A: 痰の色や状態によって適切な薬が異なるため、薬剤師に相談してから購入することをお勧めします。

Q: 痰が出にくいときはどうすればいいですか?

A: 無理に咳をして出そうとすると気道を傷つけることがあるため、水分補給や加湿で自然に出やすくすることを心がけましょう。

Q: 朝だけ黄色い痰が出るのは心配ですか?

A: 夜間に溜まった分泌物が濃縮されただけの可能性があります。1日を通して観察し、続くようなら受診を検討してください。

Q: 痰を飲み込んでも大丈夫ですか?

A: 健康な状態の痰なら問題ありませんが、感染症の場合は細菌を体内に戻すことになるため、できるだけ吐き出すようにしましょう。

最後に

痰の色は、私たちの体が発する大切な健康のバロメーターです。透明や白色から黄色、緑色へと変化する痰の色は、体内で起きている炎症や感染の程度を教えてくれます。

日頃から痰の色を観察し、変化に気づいたら適切に対応することで、重篤な病気を予防し、早期治療につなげることができます。痰の色だけでなく、他の症状と合わせて総合的に判断し、必要に応じて医療機関を受診することが、健康を守る第一歩となります。

呼吸器の健康は全身の健康につながります。痰の色という身近なサインを見逃さず、適切なケアを心がけていきましょう。

西岡 清訓(にしおか きよのり)

にしおか内科クリニック

院長 西岡 清訓

(にしおか きよのり)

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