肺がんの予防についてお話したいと思います。昨今は予防医学の重要性が叫ばれていますが、日本人のがん死亡原因第1位の肺がん予防は特に重要です。
がんの予防には1次予防と2次予防があります。1次予防はがんにならないようにすること、2次予防はがんを早期発見することです。
□肺がんの1次予防
肺がんにならないようにするにはその原因を避けることです。肺がんの一番の原因はタバコです。喫煙者は非喫煙者と比べて男性で4.4倍、女性では2.8倍肺がんになりやすく、喫煙を始めた年齢が若く、喫煙量が多いほどそのリスクが高くなります。受動喫煙(周囲に流れるたばこの煙を吸うこと)も肺がんのリスクを20〜30%高めます。
喫煙以外では、アスベスト、ラドン、ヒ素、クロロメチルエーテル、クロム酸、ニッケルなどの有害化学物質(ほとんどが職業曝露)やPM2.5(粒径 2.5 ミクロン以下の微小浮遊粒子)を吸い込むことが肺がんの原因になると言われています。
つまり肺がんの予防は喫煙をやめること、受動喫煙をさけること、PM2.5を大量に吸い込まないことです。
食べ物では果物、野菜、イソフラボン(大豆に多く含まれる抗酸化物質)の摂取が肺がんの予防に有効とのデータがありますのでこれらの食べ物の摂取を心がけましょう。また運動が肺がんになるリスクを26%減らすというデータもあり、スポーツは心身ともに健康につながる良い習慣ですのでぜひ一生続けていただきたいと思います。
□肺がんの2次予防
がんの中でもたちの悪い肺がんは特に早期発見、早期治療が重要です。私は呼吸器外科医としてたくさんの肺がん患者さんを手術させていただきましたが、肺がん患者さんの3割くらいしか手術に至りませんでした。残りの7割の患者さんは手術しなくてすんだのではなく、進行しすぎて手術をしてもメリットはないと判断され、抗がん剤治療や放射線治療を選択せざるを得なかったのです。当然手術したほうが治る可能性は高く、抗がん剤治療や放射線治療をした患者さんは治る可能性が低くなります。
肺がんは進行するまで症状が出ないことが多いので、検診で早期発見することが重要です。
検診の一般的な検査は胸部レントゲンですが、肺がんの発見能力は十分ではありません。そこで威力を発揮するのが胸部CTです。胸部CTによる肺がんの発見率は胸部レントゲンの10倍と言われています。しかし被曝量が比較的多い検査ですので一般検診に用いるのは適当ではなく、胸部レントゲンで異常を認めた患者さんに実施するのが通常です。検診に用いるのなら重喫煙者(タバコを若年時より長年多くの本数を吸っている人)や血縁に肺がん患者さんがいる人、職業曝露がある人などリスクが高い人に実施すべきであると考えられています。
私は外科医を引退し呼吸器内科開業医として肺がんを早期に発見する側にいます。肺がんの最良の治療は今でも手術です。手術適応の肺がんの患者さんを一人でも多く見つけるためにクリニックにCTを導入し、肺がんが疑われる患者さんには胸部CTを実施しています。肺がんが心配な方、胸部レントゲンで異常を指摘された方は尼崎市塚口の内科にしおか内科クリニックまでお気軽にご相談ください。