喘息は命に関わる病気―治療を続けることが大切です
こんにちは、尼崎市塚口のにしおか内科クリニックです。
昨年6月に著名な落語家の方が喘息でお亡くなりになりました。このニュースを知り、大変残念に思うと同時に、「喘息が原因で亡くなることがあるのか」驚かれた方も多いのではないでしょうか。
実際、最近では私のような呼吸器専門の医師であっても、喘息死を耳にする機会はそれほど多くありません。
報道によると、亡くなられたのは午前3時頃とのことでした。私自身、救急病院で当直をしていた頃、夜中や朝方に喘息の患者さんがしばしば受診されていたことを思い出します。待ち時間を避けるためにあえて夜間に受診される方もいらっしゃいますが、喘息の場合はそうではなく、副交感神経が優位になる夜中や朝方に症状が悪化しやすいのです。副交感神経は気管を収縮させたり痰を増やす働きがあるため夜中や朝方に喘息発作が起こりやすくなるという理屈です。
私が医師になった30年前には、年間約6,000人の方が喘息でお亡くなりになっていました。しかし、吸入ステロイド薬の開発をはじめとする治療の進歩により、2021年には喘息による死亡者数は約1,000人にまで減少しました。我々呼吸器専門医は「喘息死ゼロ」を目標に診療を行っていますが、それでもなお喘息で命を落とす方がおられることは事実です。その背景には、「症状が落ち着いたから」と自己判断で治療を中断してしまうケースが少なくないことが挙げられます。
喘息治療の基本は、吸入ステロイドを継続することです。症状が出ていない時期でも、吸入を続けて炎症を抑え、発作を未然に防ぐことが非常に重要です。特に注意すべき点として、喘息死された方の約4割が重症の喘息患者さんですが、4割は軽症または中等症の患者さんであったということです。
また、喘息で亡くなる方の大半は65歳以上の高齢者であることも見逃せません。高齢の喘息患者さんは、自己判断で治療を中断しないことが肝要です。
「ステロイドは副作用が怖い」と言って吸入をやめてしまう方もいらっしゃいますが、これは大きな誤解です。内服や点滴のステロイドとは異なり、吸入ステロイドは適切に使用すれば副作用が少なく、むしろ、吸入を中断することで気道の炎症が進行し、発作が起こりやすくなるほうが危険です。吸入ステロイドを継続することこそが、喘息死をゼロにするための最も重要な鍵となります。
尼崎市塚口の内科・呼吸器内科のにしおか内科クリニックでは、喘息の診断・治療を行い、患者さん一人ひとりに合った適切な管理をサポートしています。喘息症状がある方、治療を継続すべきか迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。