はじめに:おしりのできものでお悩みの方へ
「おしりにできものができて痛い」「座ると激痛が走る」「恥ずかしくて誰にも相談できない」そんなお悩みを抱えていませんか?
おしりのできものは、多くの方が経験する身近な症状です。しかし、デリケートな部位だけに、なかなか人に相談できず、我慢してしまう方が少なくありません。本記事では、肛門科専門医として、おしりのできものの原因から治療法まで、詳しく解説します。
おしりのできものが痛い!その原因とは
なぜおしりにできものができやすいのか
おしりは体の中でも特にできものができやすい部位です。その理由として、毛穴や汗腺が多く存在し、座ることによる圧迫や摩擦を常に受けているからです。また、下着による蒸れや、排便後の清拭による刺激も加わります。
さらに、おしりは清潔に保つのが難しい部位でもあります。汗や皮脂、排泄物などが付着しやすく、細菌が繁殖しやすい環境になっています。これらの要因が複合的に作用し、できものができやすくなるのです。
痛みを伴うできものの特徴
おしりのできものが痛い場合、多くは細菌感染による炎症が原因です。感染が起こると、白血球が集まって膿を形成し、内部の圧力が高まることで痛みが生じます。特に座った時に痛みが強くなるのは、できものが圧迫されるためです。
痛みの程度は、できものの大きさや深さ、感染の程度によって異なります。表面的な小さなできものであれば軽い痛みで済みますが、深部に膿がたまると激痛を伴うことがあります。
痛いおしりのできもの:代表的な5つの種類
1.毛嚢炎(もうのうえん)
特徴:毛穴に細菌が入り込んで起こる炎症。赤く腫れて中心に白い膿が見える
痛みの程度:軽度~中等度。触ると痛い
好発部位:おしりの毛が生えている部分
原因:不衛生、カミソリ負け、摩擦
2.粉瘤(ふんりゅう)・アテローム
特徴:皮膚の下に袋状の構造ができ、老廃物がたまってできるしこり
痛みの程度:通常は無痛だが、感染すると激痛
好発部位:おしりのどこでも発生
原因:体質、毛穴の詰まり
3.肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)
特徴:肛門の周りに膿がたまる病気。急激に腫れて激痛を伴う
痛みの程度:重度。座れないほどの激痛
好発部位:肛門の周囲
原因:肛門腺の感染、下痢、免疫力低下
4.血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)
特徴:肛門の縁に血の塊ができて腫れる。青紫色のしこり
痛みの程度:中等度~重度。突然の激痛
好発部位:肛門の出口付近
原因:便秘、いきみ、長時間の座位
5.脂肪腫(しぼうしゅ)
特徴:皮下脂肪が塊になったもの。柔らかく動く
痛みの程度:通常は無痛
好発部位:おしりの皮下
原因:体質、遺伝的要因
こんな症状は要注意!すぐに受診すべきサイン
緊急受診が必要な症状
おしりのできものに以下の症状が伴う場合は、速やかに肛門科を受診してください。
激痛で座れない・歩けない:深部感染や肛門周囲膿瘍の可能性があります。放置すると敗血症などの重篤な合併症を起こすことがあります。
38度以上の発熱がある:細菌感染が全身に広がっている可能性があります。抗生剤の点滴治療が必要な場合があります。
できものから大量の膿や血が出る:感染が進行し、自然に破れた状態です。適切な処置をしないと、慢性化する恐れがあります。
早期受診をお勧めする症状
できものが急速に大きくなる:悪性腫瘍の可能性も否定できません。良性でも早期治療が必要です。
何度も同じ場所にできる:粉瘤や痔瘻(じろう)の可能性があり、根本的な治療が必要です。
硬いしこりが動かない:深部の腫瘍や悪性の可能性もあるため、精密検査が必要です。
肛門科での診察と治療法
診察の流れ
肛門科での診察は、プライバシーに十分配慮して行われます。まず問診で症状の詳細を伺い、視診・触診で、できものの状態を確認します。必要に応じて、超音波検査やCT検査を行うこともあります。
診察時の体位は、横向きに寝た状態で行うことが多く、患者様の羞恥心に配慮し、必要最小限の露出で診察を行います。看護師も同性の方が対応することが多いです。
治療方法
保存的治療(軽症の場合)
軽度の毛嚢炎や初期の粉瘤感染には、抗生剤の内服と外用薬で治療します。座浴(ぬるま湯にお尻をつける)も効果的です。痛み止めも併用し、1~2週間で改善することが多いです。
切開排膿術(膿がたまっている場合)
膿瘍や感染した粉瘤には、局所麻酔下で小さく切開し、膿を排出します。処置は10分程度で終わり、その場で痛みが劇的に改善します。術後は毎日ガーゼ交換が必要ですが、1~2週間で治癒します。
摘出手術(根治が必要な場合)
粉瘤や脂肪腫など、再発しやすいできものは、袋ごと完全に摘出する手術を行います。局所麻酔で20~30分程度の手術です。きちんと摘出すれば再発はほとんどありません。
自宅でできる痛みの対処法とケア
痛みを和らげる方法
温座浴:40度程度のぬるま湯に10~15分お尻をつけることで、血行が改善し痛みが和らぎます。1日3~4回行うと効果的です。
正しい座り方:ドーナツ型クッションを使用し、できものに直接圧力がかからないようにします。長時間の座位は避け、こまめに立ち上がりましょう。
冷却と温熱の使い分け:急性期の腫れには冷却、慢性期の痛みには温熱が効果的です。タオルに包んだ保冷剤や温タオルを使用します。
日常生活での予防法
清潔を保つ:排便後は、ウォシュレットを使用するか、ぬるま湯で優しく洗浄します。ゴシゴシこすらず、押さえ拭きを心がけましょう。
下着の選び方:綿100%の通気性の良い下着を選び、きつすぎないサイズを着用します。化学繊維は蒸れやすいので避けましょう。
生活習慣の改善:便秘を防ぐため、食物繊維と水分を十分に摂取します。規則正しい生活とストレス管理も重要です。適度な運動は血行を改善し、免疫力を高めます。
よくある質問(Q&A)
Q:市販薬で治りますか?
A:軽度の毛嚢炎なら市販の抗菌軟膏で改善することもありますが、痛みが強い場合や3日以上改善しない場合は受診をお勧めします。
Q:放置するとどうなりますか?
A:感染が広がり、痔瘻や敗血症などの重篤な合併症を起こすことがあります。また、慢性化して治療が困難になることもあります。
Q:手術は痛いですか?
A:局所麻酔を十分に使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。術後も適切な痛み止めを使用し、痛みをコントロールします。
Q:再発することはありますか?
A:毛嚢炎は体質により再発しやすいですが、粉瘤や脂肪腫は完全に摘出すれば再発はまれです。予防的なケアも重要です。
まとめ:恥ずかしがらずに早めの受診を
おしりのできもので痛い症状は、適切な治療により必ず改善します。デリケートな部位だけに受診をためらう方も多いですが、肛門科医は日常的にこうした症状を診察しており、患者様の羞恥心に配慮した診療を心がけています。
痛みを我慢し続けると、症状が悪化し、治療も複雑になってしまいます。「おしりのできものが痛い」と感じたら、恥ずかしがらずに早めに肛門科を受診しましょう。私たち肛門科医は、患者様が快適な日常生活を取り戻せるよう、全力でサポートいたします。

にしおか内科クリニック
院長 西岡 清訓
(にしおか きよのり)
- (元)日本呼吸器外科学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会指導医・専門医
- 日本外科学会専門医
- 麻酔科標榜医・がん治療認定医