粉瘤とは
一見、脂肪の塊のようですが、表皮が袋のようになってそこへ皮脂や角質が溜まり、皮膚がふくらむ疾患です。
体表のどの部位にも形成されることがあり、多発するケースも見られます。ただ傾向としては、背中・首・顔面に生じることが多いようです。大きなものでは、10センチ程度にまで達します。
粉瘤は、アテローム、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)と呼ばれることもあります。
その他、以下のような特徴があります。
- 押したり刺激を与えたときに、嫌なにおいのする皮脂の塊が出てくることがある。
- 黒、青っぽく変色することがある。
- 異常な速度で大きくなることがある。
- ニキビのように、放置していて治ることがない。
- 潰すと炎症や感染の原因となり、余計に大きくなる。
- 細菌が皮膚の内側に侵入した場合には、痛み・腫れが生じることがある。(炎症性粉瘤)
※粉瘤の治療は基本的に手術ですが、炎症(化膿)性粉瘤へと進展した場合には、一旦排膿処置(少し切って膿を出すこと)をして炎症を治めてから後日根治手術になります。排膿処置で一旦炎症が治まったまま放置すると炎症が再燃することがありますので、そうなる前に根治手術をお勧めします。
排膿処置は受診当日に行いますが、お待ちいただくことが多いです。根治手術は炎症が治まってから1ヶ月以上時間をおいてからの予約手術になります。
粉瘤の原因
本来であれば剥がれ落ちていくはずだった皮膚が、皮膚の内部にめり込んで袋状の腫瘍を形成し、そこへ皮脂や角質が溜まって腫瘍が形成されます。
毛穴があるところに生じるケースがよく見られますが、毛穴がない部位でも起こります。そのため、小さな傷などをきっかけとして皮膚が内側へめり込むことが原因ではないかと言われています。ですので、虫刺され、ピアス穴、ニキビ跡が原因の一つになることも考えられます。
なぜ正常に剥がれ落ちていかずに内側にめり込んでいくのか、という根本的な原因は未だはっきり分かっておりません。
当院の粉瘤治療の特徴
粉瘤の根本的な治療のためには、手術を行うことになります。当院では、局所麻酔下での粉瘤の日帰り手術を行っております。
粉瘤の手術は大きく「切開法」「くり抜き法」の2種類に分けられます。
当院では、基本的には切開法による日帰り手術を行っておりますが、状況によってはくり抜き法を行うことがあります。くり抜き法で行っても日帰り手術が可能です。日本外科学会指導医・専門医である院長が、正確な診断と、丁寧で傷跡の残りにくい手術に努めております。
日本外科学会指導医・専門医による日帰り手術
日本外科学会指導医・専門医である院長が、安全に「切開法」での手術を行います。
粉瘤は、ニキビのように自然に治ることはありません。潰したり触ったりしていると、炎症・感染を起こすリスクも高まります。炎症を起こしてしまうと切除範囲が大きくなったり、粉瘤の袋の範囲同定が困難になり取り残したりする可能性がありますので再発の原因にもなります。粉瘤が疑われるしこりを見つけたときには、炎症を起こす前にできるだけ早くご相談ください。
粉瘤の日帰り手術
当院では、粉瘤に対する日帰り手術を行っております。局所麻酔の上、患者様の身体のご負担を最小限に抑えて日帰り手術を行うことができます。
手術を日帰りで行うことには、以下のようなメリットがあります。
- 局所麻酔による手術のため、身体への負担が少ない。
- 仕事や育児、介護など日常生活への影響を最小限に抑えられる。
- 入院手続きやご家族による身の回りのお世話が必要ない。
- 費用を安く抑えられる。
日帰り・局所麻酔の場合でも、手術内容は基本的に全身麻酔時と同じです。日帰り・局所麻酔だからといって、手術の工程が省かれるようなことはありません。局所麻酔による日帰り手術は、全身麻酔による手術と同じ結果が得られることを前提として選択しています。ご安心の上、ご相談ください。
保険適用
粉瘤の手術は、脂肪種の手術と同様、健康保険が適用されます。
また、粉瘤の手術費用については下記をご覧ください。
麻酔による痛くない手術
局所麻酔の注射を打つ際には、チクッとした痛みを感じます。ただ、その後は麻酔の効果によりほとんど痛みはありません。
粉瘤手術の流れ(炎症性粉瘤)
診察
症状をお伺いして診察を行い、脂肪種などとの鑑別に注意しながら、粉瘤であるかどうかを確認します。
診断後、患者様に手術の実施のご意志を確認します。
局所麻酔
粉瘤の周囲に印をつけ、局所麻酔をかけていきます。
切開
粉瘤にメスで切開を加え、膿を出します。
炎症が落ち着くまで待つ
必要に応じて通院しながら、炎症が落ち着くまで、数週間待ちます。
再手術
炎症が落ち着いた時点から1か月後以降に再手術を行います。
※炎症がない場合は医学的にはすぐに根治術が可能ですが、患者さんに手術内容、合併症等を十分に理解、納得いただくため当日手術は行わず、後日予約手術とさせていただいています。
抜糸
再手術から約1週間後に、抜糸を行い治療は終了となります。
手術の費用
以下の表では、粉瘤の手術にかかる費用の目安を記載しております。
粉瘤の手術は保険適用になります。
3割負担時の費用です。1割負担の方は、この費用の3分の1を目安にしてください。
※「露出部」とは、頭、顔、首、肘から先、膝から下を指します。
部位 | 費用 |
---|---|
露出部の2cm未満の粉瘤 | 5,310~5,910円 |
露出部の2~4cmの粉瘤 | 11,340~11,940円 |
露出部の4㎝以上の粉瘤 | 13,410~14,010円 |
露出部以外の3cm未満の粉瘤 | 4,170~4,780円 |
露出部以外の3~6cmの粉瘤 | 10,020~10,630円 |
露出部以外の6㎝以上の粉瘤 | 12,810~13,420円 |
- 上記手術費用以外に、初診料、再診料、処方料、薬剤料などが加算されます。
- 診療報酬の改定により、金額が変更となることがあります。
粉瘤に対する予防
粉瘤は、年齢に関係なく、誰にでも、身体のどこにでも生じることのある腫瘍です。皮膚が内側にめり込む根本的な原因が分かっていないため、「予防法」というものは現在のところありません。
ただし、背中・首・顔面に形成されやすい傾向がありますので、特に背中、首の後ろは、ときどき触って確かめたり、鏡で観察すると良いでしょう。また、粉瘤が大きくなるとそれだけ手術時の患者様のご負担も大きくなります。放置していて自然に治ることはありませんので、しこりに気づいたときには、できるだけ早くご相談ください。
他院への紹介
顔面や肘関節など重要な神経が存在する部位にできた粉瘤の場合は、形成外科や整形外科にご紹介することがあります。