いぼ痔(内痔核)の日帰り手術とは?切らずに治す注射療法
ジオン注射はどんな痔に適応される?適応の見極めが重要
痔は多くの方が経験する疾患ですが、治療に対する不安や誤解から、我慢を続けてしまうケースが少なくありません。「痔=切る手術が必要」と考えている方も多くいらっしゃいますが、近年では、切らずに治す注射による痔治療「ジオン注射療法(ALTA療法)」が注目されています。
この治療法は、いぼ痔(内痔核)に対して行われる硬化療法で、専用の薬剤を注射することで痔核の血流を減らし、痔を小さくしていく方法です。出血・脱出といった症状に対して高い効果を発揮し、しかも日帰りで治療が可能です。
▼ジオン注射が適応となる痔の種類は?
ジオン注射療法は、痔のすべてに有効なわけではありません。治療効果が期待できるのは、次のような症例です。
- いぼ痔(内痔核=肛門の奥の方にできた痔)のⅡ〜Ⅲ度(ゴリガー分類)
- 排便時に出血があるが、強い痛みはない
- 痔核が脱出するが、指で押せば戻る
- 痔核が大きく、日常生活に支障が出ている
逆に、以下のような痔にはジオン注射は不適応です。
- 外痔核(肛門の入口の方にできた痔)や血栓性外痔核(肛門にできた血豆による痔)
- 裂肛(切れ痔)や痔瘻(じろう)
- 脱肛や直腸粘膜脱
- 指で戻せない痔核(Ⅳ度)
そのため、ジオン注射が本当に有効かどうかを見極めるには、専門的な診察・診断が不可欠です。当院では、経験豊富な医師が詳細な診察と肛門鏡検査を行い、適応を正確に判断しています。
ジオン注射療法(ALTA療法)とは?治療の仕組みと効果
「ジオン注射療法」は、正式には「ALTA(アルタ)療法」とも呼ばれる内痔核硬化療法です。ジオン注(商品名:ジオン®)は、硫酸アルミニウムカリウム水和物とタンニン酸を主成分とする薬剤で、2005年に日本で保険適用となりました。
▼ジオン注射の4段階の投与方法
治療は「四段階注射法」に基づいて行われます。これは、痔核の4つの層に段階的に薬液を注入することで、痔核を内側からしっかりと硬化・縮小させる方法です。
- 内痔核の奥の深い層に注射
- 内痔核自体の深い層に注射
- 内痔核自体の浅い層に注射
- 内痔核の外痔核に近い部分に注射
このように段階的に注入することで、出血を抑える効果と脱出を改善する効果の両方を得ることができます。
▼治療の主な効果
- 出血が早期に止まる:注射後1〜3日で多くの方が出血が減少、もしくは完全に止血される
- 脱出が改善される:たいていの場合、初回の便より脱出しなくなる
- 痔核が小さくなる:約2週間〜1か月で目に見えて縮小
- 他の硬化療法に比べて再発が少ない:生活習慣の改善をあわせて行えば、高い根治性が期待できます。ただし、切除術に比べると再発率は高い
従来の手術と比較して痛みが少ないことが大きなメリットです。切開を伴わないため、術後の疼痛や出血が少ないです。
ジオン注射療法の実際の流れ:診察から帰宅まで
ジオン注射による治療は、外来で日帰りで受けることができます。当院では、術前・術中・術後の説明を丁寧に行い、患者さまに安心して治療を受けていただくことを大切にしています。
STEP1:ご来院・診察・適応の確認
- 問診にて症状の内容、排便状況、既往歴などをお伺いします。
- 肛門鏡を使用して痔核の状態を確認。
- 治療適応(内痔核か、何度か)を判断。
- 適応と判断された場合、ジオン注射療法についてご説明し、同意をいただきます。
- 腎機能が悪ければジオン注射療法ができないため、腎機能チェックの採血を行います。
※通常、受診当日に治療を行うことはありません。
STEP2:手術当日
- 来院後に排尿を済ませ、処置室へ移動。
- 肛門周囲に局所麻酔を行い、麻酔が効いていることを確認。
- 肛門鏡を使用して内痔核にジオン注射を施行。
- 所要時間は10〜20分程度です。
STEP3:処置後の安静・帰宅
- 処置後は、出血や体調を確認するために15〜30分ほど院内で安静に過ごしていただきます。
- 問題がなければ、そのままご帰宅が可能です。
- 当日は入浴を避けていただきますが、シャワーは可能です。
STEP4:術後のフォローアップ
- 術後に痔の軟膏と内服薬(抗生剤、痔の腫れ止め、痛み止め)を処方します。
- 原則、翌日に受診していただきますが、場合によっては1週間以内に受診していただきます。
- その後、発熱や痛みがなければ2〜3週間後の診察で治療の経過をチェックし、良好なら終診となります。
日帰り手術後の注意点と自宅療養のポイント
ジオン注射療法は身体への負担が少ないとはいえ、注射後の過ごし方や生活習慣にはいくつかの注意点があります。
正しいセルフケアと定期的な診察を受けることで、再発予防や合併症のリスクを最小限に抑えることが可能です。
▼術後当日の注意点
- 安静に過ごすことが基本です
処置後、は激しい動きは避け、なるべく横になって過ごしましょう。 - 自転車・バイク・自動車の運転は控えてください
肛門への刺激が加わると出血や違和感の原因となるため、最低でも当日は運転を控えてください。 - 入浴は控え、シャワー浴のみ
注射部位は温めない方が良いため、当日は湯船につかることを避け、軽いシャワー程度にしてください。 - 飲酒・香辛料は避ける
血管が拡張されると出血のリスクが高まります。お酒や辛い食事は術後3日間は控えましょう。
▼術後1週間の過ごし方
軽い日常生活は問題ありませんが、無理な姿勢や長時間の座りっぱなしは控えることをおすすめします。
トイレではいきみすぎに注意し、長時間座らないことが大切です(目安:5分以内)。
便秘がちな方は、医師の指示により軟便薬を継続して使用します。
▼痛み・出血について
注射の影響で、違和感・張る感じ・軽度の痛みや出血が出ることがありますが、ほとんどの場合一時的です。
我慢できないほどの痛みや、大量の出血がある場合は、すぐに当院へご連絡ください。
▼術後の診察スケジュール
時期 | 主な診察内容 |
---|---|
術後翌日 | 傷の状態確認、出血・痛み・発熱の有無をチェック。 軟膏の処方や生活指導も行います。 |
術後1週間後 | 注射部位の硬化状態や、症状の改善状況を評価します。 |
術後2〜3週間後 | 必要に応じて最終診察。脱出や出血が残っていないかを確認します。 |
術後6週間以降 | 症状が残る場合や、希望がある場合は追加の診察を行います。 |
▼治癒までの目安期間
ジオン注射による硬化反応は約6週間かけて徐々に進行し、最終的には3か月程度で安定します。
多くの方が、術後1週間以内に「出血が止まった」「脱出しなくなった」と実感されています。
ジオン注射療法の費用と保険適用について
ジオン注射療法は、保険適用のある治療法です。自由診療ではなく、患者さんの保険の種類に応じて1、2、3割負担での治療が可能です。
当院では、費用の目安を事前にわかりやすくご説明し、ご納得のうえで治療を受けていただいております。
▼治療費の内訳(3割負担の場合)
項目 | 費用目安(3割負担) |
---|---|
ジオン硬化療法本体費用 | 約23,000円 |
初診料・再診料・検査料 | 約2,000〜3,000円 |
薬剤・処方料(坐薬・軟膏) | 約1,000〜2,000円 |
合計 | 約26,000〜28,000円前後 |
※診療報酬の改定や処方内容によって変動することがあります。
▼その他の保険制度について
高額療養費制度や医療費控除の対象になる場合があります。
自己負担額が一定額を超えると払い戻しを受けられるケースもありますので、詳細はお住まいの自治体や保険者にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
▼受診・診察について
Q1. 受診当日にジオン注射を受けられますか?
A. 通常、受診当日に治療を行うことはありません。下剤の服用や浣腸などの前処置が必要であることと、説明を受けてから24時間以上経過してから(よく内容を理解し、納得できる時間を設けるため)の処置や手術が推奨されているからです。
Q2. 恥ずかしさが不安です…
A. 当院では完全個室で側臥位(横向き)での診察を行い、バスタオルなどを用いプライバシーに配慮しています。
Q3. 痛みはどの程度ありますか?
A. 内痔核に注射しても基本的には痛みを感じません。しかし注射液が深層や外痔核に浸透したときには、軽い痛みや違和感、張り感があることがありますが、時間とともに改善します。
Q4. ジオン注射療法は何回も行う必要がありますか?
A. 通常は1回の注射で効果が期待できますが、症状によっては追加の治療が必要な場合もあります。
Q5. 治療後に再発することはありますか?
A. 再発率は10〜15%程度とされます。排便習慣や生活習慣の見直しが再発予防に大切です。
Q6. いつから仕事に復帰できますか?
A. 多くの方が術翌日〜2日後には通常勤務に戻っています。ただし、力仕事や長時間座り続ける作業は避けた方が良いでしょう。
Q7. 食事制限はありますか?
A. アルコール・香辛料など刺激物は術後3日間は控えてください。それ以外は特に制限ありませんが、食物繊維を多めに取ることをおすすめします。
Q8. 排便が心配です。
A. 排便時のいきみは避け、必要に応じて処方された便軟化剤を使いましょう。無理に我慢せず、自然なタイミングでトイレへ行くことが大切です。
ご来院の際はお気軽にご相談ください
おしりの悩みは、誰にも相談しづらく、我慢してしまうことが多い分野です。
しかし、我慢が症状を悪化させる最大の原因でもあります。
にしおか内科クリニックでは、「安心して相談できる」「切らずに治療できる」「再発しない生活をサポートする」という3つの柱をもって、患者さま一人ひとりの痔治療に向き合っています。
軽い出血や違和感でも、早期に対応すれば短期間・低負担で症状が改善します。
恥ずかしさに負けず、一歩を踏み出すことで、あなたのQOL(生活の質)は大きく向上します。
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