なぜ息苦しさを感じるのか?呼吸器の視点から解説
息苦しさや「酸素が足りない感じ」がする背景には、呼吸器系の機能低下が関わっていることが少なくありません。
- 気道の炎症や狭窄:空気の通り道が狭くなることで、呼吸がしにくい状態になります
- 肺胞での酸素交換の低下:肺で十分な酸素を取り込めなくなり、息苦しさにつながります
- 肺の容量減少:肺が十分に膨らまないことで、呼吸の効率が悪化します
このような呼吸機能の問題は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、肺水腫などの呼吸器疾患によって引き起こされることが一般的です。
さらに、体重の増加や睡眠中の呼吸障害、精神的なストレスも、間接的に呼吸機能に悪影響を与え、息苦しさを助長する要因となります。
呼吸器の病気による息苦しさ|代表的な疾患と特徴
喘息による息苦しさ
気道が過敏に反応することで、息切れ、ゼーゼーという喘鳴、咳が出現します。運動後や夜間に症状が悪化しやすいのが特徴です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
長年の喫煙習慣や慢性的な咳・痰が続き、安静にしていても息苦しさを感じるようになります。
肺炎・肺水腫
急激に息が苦しくなり、発熱や胸の痛みを伴うケースがあります。
肺血栓塞栓症・胸膜の病気
突然の強い息苦しさや胸痛が現れることがあり、緊急性が高い場合もあります。
息苦しさに伴う症状|診断のための確認ポイント
息苦しさを正確に評価するためには、以下の点を確認することが重要です。
- 息切れや息苦しさの程度:どのくらい苦しいか、どれくらい続いているか
- 発作的か持続的か:突然起こるのか、常に感じているのか
- 夜間・早朝の悪化:寝ている時や明け方に悪化する場合、睡眠時無呼吸症候群などの可能性も
- 体位との関係:横になると苦しくなる場合、心不全や肺の病気が疑われることもあります
診断には、肺機能検査(スパイロメトリー、肺容量の測定)、胸部レントゲンやCT、血液検査(炎症や感染、貧血の有無)、場合によっては血液ガス分析などが用いられます。
息苦しい時の対処法|自宅でできるセルフケア
呼吸を整えるための基本テクニック
- 深呼吸や腹式呼吸の練習:リラックスした状態で、ゆっくりと呼吸のペースを整えていきましょう
- 室内の湿度管理:空気が乾燥すると咳や喘鳴が悪化しやすいため、適度な湿度を保つことが大切です
生活習慣の改善で息苦しさを軽減
- 禁煙の徹底:喫煙は呼吸器にとって最大の負担。禁煙外来などのサポートも活用しましょう
- アレルゲン対策:ホコリ、花粉、ペットの毛などを減らし、空気清浄機の使用も効果的です
- 適度な運動習慣:無理のない範囲で体を動かし、呼吸筋や体力を維持しましょう
- 睡眠環境の整備:就寝前のリラックスタイムや、寝室の環境改善が呼吸の質を高めます
薬物療法を正しく活用する
- 吸入薬の適切な使用:気道を広げる薬や炎症を抑える吸入薬は、正しい使い方が効果を左右します
- 自己判断での中止は禁物:症状が落ち着いても、医師の指示なく薬を止めると再発リスクが高まります
- 定期受診で薬の見直し:個々の症状に合わせた最適な治療を続けることが重要です
主な呼吸器疾患と息苦しさの関連性
COPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼吸機能の低下
COPDは長期にわたる息苦しさ、咳、痰を主症状とします。診断にはスパイロメトリーや胸部画像検査が不可欠で、治療は薬物療法、呼吸リハビリテーション、感染予防が中心となります。
喘息と気道の過敏反応
喘息では気道の炎症と過敏性により、咳、喘鳴、息苦しさが繰り返し起こります。アレルゲンや刺激物を避け、発作時には速やかに吸入薬を使用することが基本です。
肺炎や肺血管系の病気
肺炎は急な呼吸困難と発熱を伴い、早期の診断と抗菌薬治療が求められます。肺血栓塞栓症は突然の強い息苦しさや胸痛を引き起こすため、緊急対応が必要なケースもあります。
日常生活で息苦しさとうまく付き合うために
- 運動は段階的に:低酸素状態を避けながら、呼吸機能を保つために軽い運動から始めましょう
- 体重コントロールと質の良い睡眠:体重管理と睡眠の質向上は、呼吸器への負担を軽減します
- 呼吸リハビリテーションの活用:呼吸筋のトレーニングや正しい呼吸法の習得をサポートするプログラムも有効です
いつ医療機関を受診すべき?|薬物療法と専門医の役割
以下のような症状がある場合は、早めに呼吸器専門医の受診を検討しましょう。
- 息苦しさが続いている、または悪化している
- 発作的に息が苦しくなる
- 原因がわからない新しい息苦しさが出現した
初回受診時には、症状の経過、発作の有無、喫煙歴、アレルギー歴などを詳しく伝えることが大切です。肺機能検査、胸部画像検査、血液検査などを組み合わせて、正確な診断と適切な治療方針を立てていきます。
まとめ
息が苦しい、酸素が足りない感じがするといった症状は、呼吸器の機能低下や疾患が原因であることが多くあります。日常生活でのセルフケアと正しい薬物療法、そして必要に応じた医療機関への受診が、症状改善の鍵となります。息苦しさが続く場合は、ぜひ専門医に相談してください。

にしおか内科クリニック
院長 西岡 清訓
(にしおか きよのり)
- (元)日本呼吸器外科学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会指導医・専門医
- 日本外科学会専門医
- 麻酔科標榜医・がん治療認定医