コラム

【呼吸器内科監修】胸が痛いときに考えられる原因は?右・真ん中・左それぞれの痛みに潜む呼吸器の病気とは

2025.05.25

「胸が痛い」と感じたとき、誰でも不安になります。痛みの場所が右なのか、真ん中なのか、それとも左なのかによって、疑われる原因はさまざまです。

 特に、呼吸をするときに胸が痛んだり、咳や息切れがある場合は、呼吸器系の病気が関係している可能性が高く、注意が必要です。

 今回のブログでは、「胸の右側が痛い右」「胸の真ん中が痛い真ん中」「胸の左側が痛い」といった症状から、呼吸器内科でよくみられる病気やその見分け方、検査や治療の流れまでを、専門的な視点からわかりやすく解説していきます。

☆胸痛とは?呼吸器内科で考える“胸の痛み”

「胸痛(きょうつう)」という言葉は、胸の周辺に感じる痛みを総称したものです。人によって、「ズキズキする」「締め付けられるような痛みがある」「チクチク刺すような感じ」など、痛みの種類や強さは異なります。

呼吸器内科では、特に肺や気管支、胸膜といった呼吸に関わる臓器に問題がある場合に胸痛が現れることが多く、放っておくと命に関わるケースもあります。

また、胸痛が常に呼吸器の病気とは限らず、心臓、消化器、筋肉、神経などの病気も原因となることがあるため、「呼吸器が原因なのかどうか」を見極めることが診断の第一歩です。

☆痛みの場所によって異なる原因とは?

「胸が痛い」といっても、痛む位置が右・左・中央などで違うと、疑われる病気も変わってきます。痛みの部位によって特徴的な呼吸器疾患を理解しておくことで、受診の際にスムーズに伝えられるようになります。

 ☆右胸が痛い場合に考えられる呼吸器の病気

右側の胸が痛むときは、右肺に関わる病気が原因となっている可能性があります。たとえば、右肺に細菌やウイルスが感染して起こる肺炎や、肺を包む膜(胸膜)に炎症が起きる胸膜炎などがあげられます。これらは呼吸や咳で痛みが強くなるのが特徴で、呼吸をするたびに「ズキン」とするような痛みを感じる方もいます。

また、右肺にがんができた場合も、進行すると胸痛が現れることがあります。肺がんの痛みは、初期では出にくいですが、がんが胸膜や周囲の神経に広がると痛みとして自覚されます。

さらに、結核は右肺に好発しやすいという報告もあり、慢性的な咳や痰、発熱、倦怠感などが続く場合には、早めの検査が必要です。

☆左胸が痛い場合の注意点と呼吸器の病気

左側の胸痛は、呼吸器疾患とともに心臓の病気(狭心症や心筋梗塞)との見極めが非常に大切になります。左肺に肺炎や胸膜炎が生じた場合も、咳や深呼吸によって痛みが悪化します。

特に「気胸」は注意が必要な病気で、肺に穴が開いて空気が胸の中に漏れてしまう状態です。左側の肺がしぼむと、突然「刺すような激しい痛み」とともに、「急に息が吸いづらくなる」といった症状が出ます。気胸は若い痩せ型の男性に多く見られますが、肺に慢性の病気がある方にも起こりやすいため、年齢や性別に関係なく油断はできません。

肺がんが左肺に発症した場合も、進行すると胸痛が出現することがあります。咳が長引く、血が混ざった痰が出る、体重が減っているといった症状があるときは、精密検査が必要です。

☆胸の真ん中が痛い場合に考えられる呼吸器疾患

胸の中央が痛むときは、気管支や縦隔という、肺の間の空間に問題があることが多くなります。たとえば、気管支炎では、ウイルスや細菌の感染によって気管支に炎症が起き、咳とともに「胸の真ん中が痛む」と感じることがあります。特に、咳が強く長引くと、胸の筋肉が疲労して痛みが増すこともあります。

また、縦隔に炎症が生じる「縦隔炎」では、発熱や呼吸困難を伴いながら中央部の強い痛みが現れます。重症化しやすく、早期診断・治療が求められます。

一方で、逆流性食道炎などの消化器疾患でも、胸の真ん中が焼けるような痛みを感じることがあり、呼吸器内科と消化器内科の両面からの診断が必要になることもあります。

☆呼吸器内科で多くみられる胸痛の原因疾患と症状

呼吸器内科で扱う胸痛の主な原因には、次のような病気があります。

肺炎では、発熱や咳、痰といった風邪に似た症状に加えて、胸の痛みが出ることがあります。痛みは深呼吸や咳をしたときに増すことが多く、呼吸が浅くなる傾向もあります。

気胸は、突然の強い胸痛と呼吸困難を伴い、安静にしていても痛みが続くことがあります。片側だけが痛むのが特徴で、動悸や息切れが目立つ場合には注意が必要です。

胸膜炎では、胸の膜が炎症を起こすため、呼吸や咳、体を動かしたときに鋭い痛みが走ることが多く、呼吸するのがつらくなることもあります。

肺塞栓症は、脚などでできた血の塊が肺の血管に詰まる病気で、突然の胸痛や呼吸困難、動悸、息苦しさが出ます。手術後や長時間の移動の後などに起きやすく、非常に危険な状態となることもあるため、早急な受診が必要です。

肺がんは、進行すると胸痛の他にも咳、血痰、呼吸困難、体重減少などの症状が現れます。早期発見が難しいため、気になる症状がある場合はすぐに検査を受けましょう。

 

☆胸痛を感じたときの過ごし方と注意点

もしも胸が痛くなった場合は、まずは無理をせず、呼吸がしやすい楽な姿勢で安静に過ごしましょう。前かがみになったり、横向きに寝ることで、呼吸が楽になることがあります。

室内の空気が乾燥していると、気道が刺激されて咳が出やすくなり、胸の痛みが悪化することがあります。加湿器を使用して湿度を4060%に保つことで、呼吸器の負担を軽減できます。

市販の鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を使用して痛みを和らげるのもひとつの方法ですが、痛みの原因がわからないうちはむやみに薬に頼らず、できるだけ早く医療機関で診断を受けることが大切です。

☆呼吸器内科で行う検査と診断の流れ

当院では、胸痛の原因を正確に把握するために、いくつかの検査を組み合わせて診断を行っています。

まず問診では、いつから痛みがあるのか、どのようなときに痛むのか、咳や痰、発熱など他の症状があるかを丁寧に確認します。喫煙歴や職業、既往症も重要な手がかりとなります。

次に、呼吸音を聴診器で聞いたり、胸郭を触診したりして、異常がないかを調べます。

必要に応じて、胸部レントゲンやCT検査を行い、肺や胸膜の状態を詳しく観察します。血液検査では、炎症の有無や血栓の可能性、がんのマーカーなども確認できます。

呼吸機能検査では、肺活量や一秒率などを調べて、COPDや喘息などの診断にもつなげます。喀痰検査で細菌やがん細胞を調べることもありますし、より詳しく調べるために気管支鏡検査や胸腔穿刺を行う場合もあります。

☆まとめ|胸痛を感じたら、呼吸器内科で早めに相談を

胸の痛みは決して軽視してはいけない症状のひとつです。

特に、「呼吸すると痛い」「咳や深呼吸で痛みが強くなる」「突然痛みが始まった」という場合は、呼吸器の病気が関係していることが多いため、自己判断せずに専門の医療機関を受診することが大切です。

お一人で悩まず、どうぞお気軽に当院へご相談ください。

 

 

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