コラム

【肛門科医が解説】おしりの穴がかゆい…すぐできる対処法と病院へ行くべき症状チェックリスト

2025.12.03

2025年

おしりのかゆみ、実は誰にでも起こりうる悩みです

肛門周辺のかゆみは、デリケートな部位だけに人には相談しにくい症状です。しかし適切なケアを行えば改善できるケースが多く、重大な病気のサインである可能性もあるため、正しい知識を持つことが大切です。


なぜおしりがかゆくなるの?主な原因とメカニズム

日々の生活習慣に潜む要因

肛門周辺のかゆみを引き起こす要因は多岐にわたります。

  • 肌質の影響:乾燥しやすい体質や敏感肌の方は刺激を受けやすい傾向があります
  • 洗浄習慣:強くこすりすぎる洗い方や、刺激性の高いボディソープの使用
  • 日用品による刺激:硬いトイレットペーパーや化学繊維の下着との摩擦
  • 汗や排泄物:蒸れによる湿気や、便・尿の付着による刺激
  • 消化器系のトラブル:便秘や下痢による肛門周辺への負担

見逃せない皮膚トラブルと肛門疾患

  • 皮膚の病気:かぶれ(接触性皮膚炎)、湿疹、カビによる感染(真菌症)など
  • 肛門の病気:いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)などによる炎症
  • 全身状態の影響:ホルモンバランスの乱れ、ストレス過多、食生活の偏り

こんな症状があれば要注意

かゆみに加えて以下の症状が現れた場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。

  • 肛門周辺の赤みや腫れ
  • ヒリヒリとした痛みや灼熱感
  • 皮膚がただれている
  • 排便時に痛みを感じる
  • 出血がある

特に、かゆみが長期間継続する、夜間に症状が強まる、掻きむしって症状が広がっているといった場合は、専門医への相談をおすすめします。

重大な病気の可能性も

多くは日常的なトラブルですが、以下のような疾患が背景にあることも考えられます。

  • 各種皮膚炎(かぶれ、湿疹、真菌感染)
  • 肛門周辺の細菌・ウイルス感染
  • 便通異常による持続的な刺激
  • まれではあるものの、皮膚悪性腫瘍の初期症状

長引く症状は軽視せず、早めの検査が安心につながります。


おしりの周りがかゆい…セルフチェックのポイント

病院を受診すべきタイミング

次のような状況では、自己判断でのケアを続けず、医療機関への受診を検討しましょう。

  • かゆみが2週間以上改善されない
  • 症状が日に日に悪化している
  • 赤み・ただれ・出血・痛みが強い
  • 掻いた部位が化膿している兆候がある
  • 繰り返し同じ症状が発生する

今日からできる自宅でのセルフケア

使用アイテムの見直し

  • ボディソープは低刺激・弱酸性タイプに変更
  • トイレットペーパーは柔らかく無香料のものを選択
  • 下着は綿100%など天然素材を優先
  • 洗濯洗剤も刺激の少ないタイプに切り替え

入浴時のケア方法

  • お湯の温度は40℃以下のぬるめに設定
  • 肛門周辺は指の腹で優しく洗う
  • 入浴後はタオルで押さえるように水分を取る
  • 清潔な状態で保湿クリームを薄く塗布

下着選びのコツ

  • 通気性に優れた綿素材を選ぶ
  • サイズは締め付けすぎず、摩擦を減らせるゆとりのあるもの

排便後のケア

  • ウォシュレットは弱い水圧で短時間使用
  • 拭く際はこすらず、軽く押し当てる程度に
  • 清潔な柔らかいタオルで水分をしっかり取る

食生活の改善

  • 辛い食べ物、アルコール、刺激物は控えめに
  • 水分補給をこまめに行う
  • 食物繊維を適度に摂取し、便通を整える

症状悪化のサインを見逃さない

以下の症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診してください。

  • かゆみに加えて強い痛みがある
  • 発熱している
  • 膿のような分泌物が出ている
  • 広範囲に赤い発疹が広がっている
  • 排便時に激しい痛みを伴う

おしりのできものがかゆい時の対処法

市販薬の正しい使用方法

オロナイン軟膏について 軽度のかゆみや小さな傷の感染予防に使われることがありますが、次のような状況では使用を控えましょう。

  • 傷が深い、または広範囲にわたる
  • 湿疹が広がっている
  • 症状が長期間続いている

このような場合は、自己判断せず医師の診察を受けてください。

ステロイド外用薬(リンデロンなど)の注意点 ステロイド薬は炎症を抑える効果がありますが、誤った使い方は副作用のリスクがあります。

  • 医師の診断なしに長期使用しない
  • 広範囲に塗布しない
  • 化膿している部位には使用しない
  • 必ず医師の指示に従った期間・範囲で使用する

症状が強い、または膿が出ている場合は、市販薬に頼らず医療機関を受診することが最善です。

医療機関での治療と予防

専門医は症状の原因を特定し、それぞれに適した治療法を提案します。

  • 感染症:抗菌薬や抗真菌薬
  • 湿疹・炎症:保湿剤と適切な外用薬
  • 肛門疾患:症状に応じた専門治療

予防には日々のケアが重要です。清潔を保ちつつ保湿を心がけ、刺激を避ける生活習慣を継続しましょう。


かゆみを招く意外な生活習慣

下着選びが症状を左右する

  • 綿素材で縫い目が少ないデザインを選ぶ
  • 化学繊維は蒸れやすいため避ける
  • きつすぎず、適度なゆとりのあるサイズ感を

入浴方法を見直そう

  • 熱いお湯は避け、ぬるめの温度で
  • ゴシゴシ洗いは厳禁、優しく丁寧に
  • 石鹸は刺激の少ないものを選ぶ
  • 入浴後の保湿ケアを習慣化

食事とストレスの意外な関係

  • 規則正しい生活リズムを維持
  • ストレスを溜め込まない工夫を
  • バランスの取れた食事で腸内環境を整える

おしりのかゆみが治らない…どこに行けばいい?

肛門科と皮膚科、どちらを選ぶ?

肛門科が適しているケース

  • 肛門周辺に特化した症状がある
  • 排便時の痛みや出血を伴う
  • 痔の既往歴がある

皮膚科が適しているケース

  • 肛門以外の広範囲に皮膚症状がある
  • かぶれや湿疹が主な症状
  • アレルギー体質がある

症状によってはどちらでも対応可能ですが、迷った場合はまず肛門科を受診し、必要に応じて皮膚科を紹介してもらうのも一つの方法です。

病院ではどんな検査をするの?

  • 問診:症状の経過や生活習慣について詳しく聞き取り
  • 視診・触診:肛門周辺の状態を直接確認
  • 必要に応じた検査:血液検査、細菌培養、皮膚の組織検査
  • 肛門鏡検査:肛門内部の状態を観察
  • 画像検査:必要に応じてMRIやCTなどを実施

肛門科で診てもらうメリット

  • 原因を正確に特定できる
  • 症状に最適な薬剤を処方してもらえる
  • 生活習慣の具体的な改善アドバイスが受けられる
  • 再発予防の戦略を立てられる

早期受診が早期改善につながります。症状が軽いうちに相談することで、治療期間も短縮できます。


まとめ:おしりのかゆみは適切なケアで改善できます

肛門周辺のかゆみは、多くの場合、生活習慣の見直しとセルフケアで改善が期待できます。しかし、2週間以上症状が続く場合や、症状が悪化している場合は自己判断せず、肛門科の専門医を受診しましょう。

適切な診断と治療を受けることで、かゆみの再発を予防し、快適な日常生活を取り戻すことができます。デリケートな悩みだからこそ、恥ずかしがらずに早めの相談を心がけてください。


※このコラムは情報提供を目的としており、医学的診断や治療の代替となるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

西岡 清訓(にしおか きよのり)

にしおか内科クリニック

院長 西岡 清訓

(にしおか きよのり)