痔の原因はトイレにあった?肛門科専門医が解説する意外な事実
「トイレの時間が長い」「排便時に痛みがある」「お尻から出血することがある」
このような症状でお悩みではありませんか?実は、これらは痔の典型的なサインかもしれません。日本人の3人に1人が経験するといわれる痔は、トイレでの習慣が大きく関係しています。肛門科での診療経験から、痔とトイレ時間の密接な関係について詳しく解説します。
なぜ痔の人はトイレ時間が長くなるのか?肛門科医が明かす3つの理由
1. 痔による痛みと出血への恐怖
痔(特に痔核や切れ痔)があると、排便時の痛みや出血を恐れて、ゆっくりと慎重に排便しようとします。この「怖さ」がトイレ時間を長引かせる大きな要因となっています。
2. 便秘との悪循環
痔の痛みで排便を我慢→便秘になる→硬い便でさらに痔が悪化→トイレ時間が長くなる、という負のスパイラルに陥ります。肛門科を受診する患者さんの約7割が、この悪循環に悩まされています。
3. スマートフォン症候群
現代特有の問題として、トイレでスマホを見る習慣が痔を悪化させています。「ちょっとだけ」のつもりが15分、20分と長時間になり、肛門への血流が滞ってしまうのです。
トイレの長時間滞在が痔を引き起こす医学的メカニズム
肛門科の専門的見地から説明すると、トイレに5分以上座り続けると以下の問題が発生します:
- 肛門周囲の静脈うっ血:座位により肛門部の血管に血液が滞留し、痔核(いぼ痔)の原因となる
- 肛門括約筋への過度な負担:いきみ続けることで肛門の筋肉が疲労し、痔を発症しやすくなる
- 肛門粘膜の脱出:長時間のいきみで直腸粘膜が外に押し出され、脱肛のリスクが高まる
ストレスと痔の意外な関係|心理的要因も無視できない
痔とストレスには密接な関係があります。ストレスが痔に与える影響として:
- 自律神経の乱れによる便秘:ストレスで腸の動きが悪くなり、便秘から痔へとつながる
- 免疫力の低下:ストレスによる免疫低下で、肛門周囲の炎症が治りにくくなる
- 血行不良:ストレスによる血管収縮で、肛門部の血流が悪化する
仕事のストレス、人間関係のストレス、生活環境の変化など、現代社会のストレスが痔の原因となることも肛門科では頻繁に見られます。
肛門科医が推奨する「3分ルール」と正しいトイレ習慣
理想的なトイレ時間は3分以内
肛門科専門医の多くが推奨する「3分ルール」。これ以上長くなると、痔のリスクが急激に高まります。
正しい排便姿勢のポイント
- 前傾姿勢(35度前後)を保つ
- 足台を使って膝を少し高くする
- 深呼吸をしながらリラックス
- いきみすぎない(腹圧は軽く)
今すぐできる!痔を予防する5つの生活習慣
1. 食物繊維を1日20g以上摂取
- 朝食:オートミール、バナナ
- 昼食:玄米、野菜サラダ
- 夕食:きのこ類、海藻類
2. 水分補給は1日1.5~2リットル
起床時、食事前、入浴前後など、こまめな水分補給が便を柔らかく保ちます。
3. 「ながらトイレ」の完全禁止
スマホ、本、新聞はトイレの外に置く習慣を。
4. 毎日10分の軽い運動
ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど、血行を促進する運動を習慣化。
5. 決まった時間の排便習慣
朝食後30分以内など、体のリズムを整えることで自然な排便を促します。
こんな症状があれば肛門科へ|早期受診のサイン
以下の症状が1つでも当てはまる場合は、肛門科の受診をおすすめします:
- 排便時の出血が1週間以上続く
- 肛門の痛みで座るのがつらい
- 肛門から何か飛び出している感覚がある
- トイレ時間が10分以上かかることが多い
- 便秘と下痢を繰り返す
- 肛門周囲のかゆみや違和感が続く
まとめ:痔とトイレ時間の関係を理解して健康な毎日を
痔の原因として最も見過ごされがちなのが「トイレでの長時間滞在」です。肛門科を受診する前に、まずは自分のトイレ習慣を見直してみましょう。
3分ルールの実践とストレス管理、そして正しい生活習慣を心がけることで、痔の予防・改善は十分可能です。症状が気になる場合は、恥ずかしがらずに早めに肛門科を受診することが、快適な生活への第一歩となります。
痔は決して珍しい病気ではありません。適切な知識と対策で、必ず改善できる疾患です。今日から、あなたのトイレ習慣を変えてみませんか?

にしおか内科クリニック
院長 西岡 清訓
(にしおか きよのり)
- (元)日本呼吸器外科学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会指導医・専門医
- 日本外科学会専門医
- 麻酔科標榜医・がん治療認定医