コラム

予後が悪いと言われる食道がん──早期発見こそが命を守る鍵です

2025.04.03

2025年

こんにちは、尼崎市塚口の内科・消化器内科のにしおか内科クリニックです。先日、著名な芸能人の方に食道がんが見つかりました。私自身、外科医としてのキャリアの前半は食道がんの治療に携わっており、多くの患者さんの診療にあたってきました。治療技術は年々進歩していますが、残念ながら食道がんはいまなお「予後が悪いがん」として知られており、その印象が変わるには至っていません。

その大きな理由のひとつは、リンパ節への転移の頻度が非常に高いことです。たとえ粘膜下層までしかがんが進行していない場合でも、約40%という高率でリンパ節転移が認められます。これは、同じく消化管のがんである胃がんの粘膜下層におけるリンパ節転移率(約10%)と比較して、実に4倍の高さです。

さらに、食道には首、胸、腹部にまたがる広範囲なリンパ網が存在しており、一度転移が起これば、それぞれの領域に波及しやすく、さらにはそこから全身への転移が進行し、命を脅かす原因となります。加えて、食道という臓器は、心臓や大血管、肺、気管などの重要な臓器と非常に近接しているため、がんがこれらの臓器に直接浸潤し、手術が不可能となるケースも少なくありません。このような背景が、食道がんが依然として予後の厳しいがんとされている要因です。

私が手術を担当していた当時は、通常の手術であれば申込み順に手術日が決まるのが一般的でしたが、食道がんに関しては「進行が早い」という理由で、順番を早めて緊急で手術を行うことも珍しくありませんでした。近年では、がんの進行度によっては、すぐに手術に進むのではなく、まず抗がん剤(場合によっては放射線治療も併用)を行い、その後に手術をする方が予後が良いという研究報告が増えています。

もちろん、がんがごく浅い層──いわゆる粘膜内にとどまっている状態で見つかれば、内視鏡による切除で完治を目指すことができます。しかし、このような早期段階では症状がほとんど現れないため、早期発見には定期的な検査が不可欠です。そして、リスクの高い方に内視鏡検査を積極的にご案内することが、私たち内視鏡診療に携わる医師の大切な役割です。

食道がんのリスクが高い方とは、中高年の男性で、喫煙歴や飲酒歴がある方、アルコールを飲むと顔が赤くなる体質の方、過去に咽喉頭がんや口腔がんを経験されたことのある方などが該当します。これらの条件に複数当てはまる方は、ぜひ早めに内視鏡検査を受けてください。早期発見が、命を救う何よりの手段です。

にしおか内科クリニック(尼崎市塚口)では、食道がんをはじめとする消化器疾患の早期発見と適切な対応を目指し、胃カメラ検査を行っています。ご不安な方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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