コラム

【呼吸器内科監修】百日咳の発生が急増中 ― ご注意ください!

2025.07.01

2025年

こんにちは、尼崎市塚口のにしおか内科クリニックです。

最近、院内でも百日咳と思われるケースが例年より多く見られるようになりました。調べてみたところ、当院がある尼崎市は、全国でも特に百日咳の報告数が多い地域のひとつであることがわかりました。今年は全国的に百日咳の発生数が増えており、兵庫県は20255月末の時点で、全国で2番目に多い患者数が報告されています。そして、その中でも約80%が尼崎市からの報告となっており、地域全体での注意が必要です。

百日咳は、「百日咳菌」と呼ばれる細菌によって引き起こされる感染症です。その名の通り、咳が長期間にわたって続くことが特徴です。とくに乳児や小さなお子さまでは、咳き込みによって呼吸が止まったり(無呼吸)、唇や顔が青くなるチアノーゼを起こすことがあり、時には命に関わるケースもあります。そのため、早めの対応が重要です。

診断は、鼻の奥を拭って行うPCR検査や、菌を培養する培養検査、血液中の抗体を調べる抗体検査などが用いられます。ただし、PCR検査は実施できる医療機関が限られており、培養検査や抗体検査は結果が出るまでに時間を要することがあります。そのため、症状や周囲の流行状況から百日咳が強く疑われる場合には、検査結果を待たずに治療を始めるケースも珍しくありません。

治療には、マクロライド系と呼ばれる種類の抗菌薬が使用されます。これらの抗菌薬は、咳が出始めてから12週間ほどの「カタル期」と呼ばれる初期の段階で使用することで、症状の進行を抑えたり、他人への感染の可能性を減らしたりする効果が期待されます。

その一方で、咳が激しくなる「痙咳期(けいがいき)」に入ってからでは、抗菌薬による咳の改善はあまり期待できません。しかしながら、この時期でも抗菌薬は菌の排出を抑え、他者への感染拡大を防ぐ目的では非常に重要です。したがって、「少し楽になったから」と自己判断で服薬をやめることなく、医師から指示された期間はきちんと飲み切ることが大切です。

予防の手段として最も効果的なのがワクチン接種です。日本では、「ジフテリア」「百日咳」「破傷風」「ポリオ」を組み合わせた混合ワクチンが、生後2か月から定期予防接種として接種されます。

また、最近では大人が乳幼児への感染源となることも多くなっており、医療関係者や赤ちゃんと接する機会の多いご家族に対して、追加接種を行うケースも検討されるようになっています。

そのほか、うがい・手洗いの徹底や、混雑した場所ではマスクを着用するなど、基本的な感染対策をしっかり行うことも重要です。これらは百日咳だけでなく、その他の呼吸器感染症の予防にも有効です。

西岡 清訓(にしおか きよのり)

にしおか内科クリニック

院長 西岡 清訓

(にしおか きよのり)

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